よいおっさんへの道

鞆のみなと

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初めて 広島は福山の南 鞆に訪れて
公営の駐車場に車を置き
絵具を抱えて 船着場の方に向かったときのことを
今でも鮮明に覚えている

係留されている小船の向こうに
「常夜燈」と通称「大蔵」の大屋根!!
が パッと視界に飛び込んでくるのだ!!

思わず そこでスケッチブックを広げて 描き始めてしまった
(いつもこんな調子なので 団体旅行に不向きな私)
それが 今回 UPさせていただいた この絵である
もう ビビッていて 鞆という土地の“気”に飲み込まれているのがよくわかる
鞆と友達になれていない感じ … よわっちい腰の引けた絵だな
何年前になるか

この後 何度となく通わせていただくことになるが
江戸期までの瀬戸内海海運の 名残をここまで色濃く残した町は
私の知る限りでは この鞆の浦が唯一だ

岡山の 下津井 牛窓
兵庫の 室津

まだあるのだろうが 私は 群を抜いていると確信している

町中は 確かに狭い 軒を寄せ合い 肩を寄せ合って出来上がった
風待ち 潮待ち の 港町そのままだ

自家用車の利用には 相当な困難が発生することは容易に想像できる
道端に腰掛けて スケッチも危険な状態だ

しかし 現自治体が計画する 埋め立てと架橋
コレが実現されると 私はおそらく ここにはもう来ないかもしれない

今月 工事計画差し止めを不服として 広島県は 広島高裁に上告した
県知事はここで辞めるのに 何故?
という気持ちもあるが 次期県知事の考えも知りたいものだし
不便だが この第一級の歴史遺産に誇りを持つことができない社会
あそこを あの場所を埋め立て 架橋する (取り返しのつかない景観破壊)という発想の存在
・・・に 私は違和感を感じる

今後 山岳地帯には 風力発電のプロペラをいただいた巨柱も林立しはじめるだろう
太陽光パネルもしかりだ
日本には 絵になる場所が 近い将来 消滅するだろう

有名な絵画の公募展などをのぞいても なんと 海外の風景の多いことか
それは 裏を返せば 日本には描く場所が すでにないということを 如実に物語っているのだ

それで 私たちは 子孫に顔向けできるのか?
こういう課題をこそ 培って蓄積された 人類の英知で
双方が両立するというかたちで 解決されるべきことではないのか?

ただ 便利なだけで 美しくないもの もともとの美を破壊するものを 造ってはいけないのだ
と切実に思う

文化(「美」「歴史」…)と文明(「利便性」「効率性」・・・)は
一本の車軸で結ばれた 両輪なのだと思う
by win-twins | 2009-10-27 23:35 | ギャラリー win